【実験】酸性染料Orange IIの合成


●目的
 日常着る衣服やインテリア用品など,私達は毎日染色されたものを目にしている。現在使用されている染料のほとんどは合成染料であり,その種類も多いが,この過半を占めているのがアゾ基(-N=N-)を持ったアゾ系染料である。今回の実験では代表的なアゾ染料である酸性染料C.I. Acid Orange7(Orange II)を合成し,有機合成の基本的な反応ともなっているジアゾ化,カップリングの操作を学ぶ。

●装置・器具
ビーカー,ガラス棒,温度計,ウォーターバス,ガスバーナー,三脚,金網,メスシリンダー,メスピペット,水流ポンプ,ブフナーロート,ろ過鐘,乾燥機,デシケーター

●試薬その他
スルファニ酸,2-ナフトール(β-ナフトール),亜硝酸ナトリウム,塩酸,無水炭酸ナトリウム,水酸化ナトリウム,塩化ナトリウム,pH試験紙,H酸,氷,ロ紙

●実験操作
1)スルファ二ル酸の溶解
 100mLビーカーにスルファニル酸3.5g(0.020mol)と無水炭酸ナトリウム1.5gをとり,よくかき混ぜながら水40mLを加えていく。溶けにくいため少量ずつ加え完全に溶解させる。

2)ジアゾ化
 1)のビーカーをウォーターバス中で冷却しながら,濃塩酸6mLを滴下する(塩酸を用いる実験はドラフト内で行う)。

 さらにバス中に氷を加え,10℃以下に保ちながら亜硝酸ナトリウム1.8gを10mLの水に溶かした冷溶液に徐々に滴下する。
 反応中は温度が15℃以下にならないように冷却,攪拌を続ける。約10分間でジアゾ化は完結し,p -ジアゾベンゼンスルホン酸が無色結晶性沈殿となって析出する。

3)2-ナフトールの溶解
 200mLビーカーに2-ナフトール3.0gをとり,水酸化ナトリウム1gおよび無水炭酸ナトリウム5gとを水40mLに溶かした溶液を注加し,加温溶解する。この溶液を10℃以下にする。

※参考 → 2-ナフトールの分子計算

4)カップリング
 2-ナフトール溶液をよくかき混ぜながら,2)のジアゾ化合物を徐々に添加する。カップリング反応は発熱反応であるため15℃以下に保つように温度に注意する

 また,反応中カップリング溶液はアルカリ性であることが必要なので,pH試験紙で確かめる(下の写真)。もし酸性に近くなっているようならば水酸化ナトリウム(0.5〜1g)を加える。
 約40分かき混ぜ続けるとカップリングは終了する。未反応のジアゾ化合物が残存するかどうかはH酸で確かめる(H酸のアルカリ水溶液を1滴ろ紙に落とし,その近くに被験液をつける。両液がにじんでいき接触するので,そこにH酸とのカップリング生成物の紅色の発色がみられれば,被験液中にジアゾ化が残存することになる)。

5)塩析
 4)のビーカーを湯浴中で80℃に加熱し,塩化ナトリウム2gを徐々に加え,約30分かき混ぜて放冷する。

6)ろ別
 析出したOrangeIIをブフナーロートで吸引ろ別する。

7)乾燥
 OrangeIIをビーカー(あらかじめ,ガラス棒とともに洗浄,乾燥し,重さを測定しておく)に移し,105℃で乾燥する。120℃以下の乾燥では2molの結晶水がついた水和物が得られる。105℃で乾燥したものと,120℃以上で乾燥したものについて,吸光スペクトル・検量線,DSC測定を行って比較検討する。

※MERCK INDEX によれば,OrangeII 〔4-[(2-hydroxy-1-naphthalenyl)azo]benzenesulfonic acid monosodium salt;C16H11N2NaO4S〕は水から橙色で針状の5水和物が得られ,20mLの水に1g溶解する。また,最大吸収波長は484.4nm。pH 7.4-8.6で琥珀色(amber)から橙色になり,pH 10.2-11.8で橙から赤になる。



演習例メニュー 可視吸収スペクトル測定とその計算 DSC測定