●本稿は日本化学会第81春季年会(2002/03/26-29,東京都新宿区西早稲田,早稲田大学 西早稲田キャンパス)の講演要旨で,日本化学会の了承を得て転載するものです.

Webブラウザを利用した重ね合わせ分子データによる教材の作成

(県立新潟女子短大)本間善夫
《 講演番号2PB002(講演要旨集I),2002/03/28/12:30〜 》


1. これまでにWebブラウザ上で3D分子を自由に動かして参照できるプラグインChime(MDL社)を利用したコンテンツやデータ集を公開してきている1)。分子を見る際の着眼点をわかりやすく示すために,複数分子を同一データとして表示して各分子の大きさの影響や形状の同異などを容易に把握できる教材集を新しく作成した。HTMLはボタンを押すだけで分子表示形式変更が簡便にできるようにスクリプト記述している。包接化合物などの複合分子や,同じ機能を持った分子群の類似原子団をもとにした重ね合わせ表示などのコンテンツを公開し,講義等での利用を可能にした。
2. 化学教育においても計算化学ソフトウェアの利用が進んいるが,ソフトによっては複数の分子を組み合わせたり重ね合わせたりする機能を有しているものもある。その機能活用により分子データを作成し,Chime によってブラウザに表示してRasMolスクリプト記述によるボタン操作で分子表示形式を個別に切り替えることが可能である。Web上に分子データの作成方法や教材集を掲載している2)
 複合分子の作例としてはカリックスアレーン([4]または[6])とフラーレンの組み合わせによる包接の可否(図1),重ね合わせ分子の作例としてはα-グルコース・サッカリン・アスパルテームなどの重ね合わせによる古典的なSchallenbergerの甘味物質受容体の説明(図2)などがあり,分子サイズや局所的な構造の影響を容易に理解できる。また薬物分子の重ね合わせでは,分子のコンホメーションが重要な因子であることも視覚的に理解できる。これらの教材により化学の初学者にも分子構造の重要性とそのおもしろさを知ってもらうことができると考える。


図1 フラーレンとカリックスアレーン(左が[4],右が[6]).


図2 甘味分子の表示例(上はα-グルコースとサッカリンによる説明画像,下はサッカリンとアセスルファムの重ね合わせモデル).


【発表時の関連資料および講演後の追加情報】(これ以下は要旨集には記載されていません)



重ね合わせ分子データによる作成画像集Chime版の例


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