◆ 抗生物質・抗菌剤/耐性菌/院内感染 ◆
トピックス分子抜粋 Chime版
抗生物質データ集抗生物質リスト|分子データ集 Chime版Jmol版
→ 抗生物質を含むPDBデータ Chime版Jmol版

= 本ページは上記タイトルに関連する本サイト内のコンテンツのリストとリンク集です =

《2002/02/24公開;随時更新》
概要版CASTpデータで見るSARS関連タンパク質例(Chime版)

※2006/03/24,分子表示をJmolに変更!!(説明画像はChimeによる) → Chimeによる分子データ表示

[TOPIC]Chime利用の関連コンテンツ)
鳥インフルエンザ情報(2004/01発生)SARS(重症急性呼吸器症候群)HIVとエイズ


 2002年1月に,東京都内の病院で多剤耐性セラチア菌(Serratia marcescens )による院内感染で7人が亡くなられたのに続き,翌2月には新潟市内の病院で多剤耐性緑のう菌(緑膿菌,Pseudomonas aeruginosa )による国内での初の死者が出てしまいました。以前からMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が問題になっていましたが,これらはすべて下記のように,抗生物質に対する耐性菌の出現が原因となっています。


 抗生物質とは微生物によって産出されるもので,もともとは他細胞の発育を阻止する物質とされたが,現在は抗菌,抗ウイルス,酵素阻害,制がんなどの作用をもつ物質を幅広くさすようになった。現代の医学で抗生物質の果たしている役割はきわめて大きい。
 最初に発見された抗生物質は,1929年にフレミングが青カビから見つけたペニシリンで,ブドウ球菌の培地に青カビが入り込んでその周囲のブドウ球菌が溶けていることから気づいたものである。なお,1957年には梅澤濱夫がカナマイシンを発見している。
 抗生物質は一般に特定の菌にだけ作用するという選択毒性をもち,たとえばペニシリンは動物には無く細菌だけがもつ細胞壁に作用してその合成を阻害して死滅させるものである。他には細菌の細胞のタンパク質や核酸の合成を阻害したり,細胞膜質の機能を障害するなどの作用によるものがある。
 ところが,抗生物質を使っているうちに,それに耐性をもつ菌が現れてくることがわかった。これを耐性菌というが,さらに別な抗生物質を見出したり開発するなどして対応していくことが必要となっている。また安易に耐性菌を生み出さないようにするために,抗生物質の使い方にも注意を払わなければならない。
 なお現在は,微生物由来のものと人工的に合成されたものを含めて100種類以上の抗生物質があるが,化学構造的にはβ-ラクタム系(ペニシリン類等),アミノグリコシド系(ストレプトマイシン,カナマイシン等)など10数種類に分類できる。

【科学者の紹介】フレミング
 イギリスの細菌学者フレミング(1881‐1955)は1922年にリゾチームを発見し,1929年にはブドウ球菌の研究中に青カビの溶菌作用に気付いて有効成分を抽出してペニシリンと命名した。その後チェインとフローリーによってペニシリンが分離されて1940年になって治療に用いられた。この3人の業績に対して1945年にノーベル生理学医学賞が与えられた。ペニシリン発見以来,抗生物質の研究が大規模に進み,日本でもペニシリンが碧素と呼ばれるなど戦中から研究が始まった。ペニシリン類の選択毒性は高く,細菌の宿主である人間への影響は小さいが,時にはペニシリンショックのようなアレルギー性の反応を起こさせることもある。

抗生物質・抗菌剤の例(初期表示はペニシリンG)
※以下の分子表示はJmolによるものに変更しました(Chimeによる表示はこちら)。
※他の抗生物質については分子データ集Jmol版Chime版参照

空間充填 球棒 針金
Jmol色 Rasmol色
ドット表面表示 OFF
回転 OFF
背景・黒 背景・灰 背景・白 

ペニシリンG(penicillin G
イミペネム(imipenem
カナマイシン(kanamycin A
クリンダマイシン(clindamycin
ゲンタマイシン(gentamicin
シプロフロキサシン(ciprofloxacin
ドキシサイクリン(doxycycline
パニペネム(panipenem
バンコマイシン(vancomycin
メチシリン(methicillin
メロペネム(meropenem
リネゾリド(linezolid)
セフェピム(cefepime
ガチフロキサシン(gatifloxacin)
 → 厚生労働省緊急安全性情報(2003/03/07)
ダプトマイシン(daptomycin
 → FDAニュース(2003/09/12)
テリスロマイシン(telithromycin)
 → 日経ニュース(2003/03/30)
※『シナシッド(Synercid)(R)』の成分
 キヌプリスチン(quinupristin
 ダルホプリスチン(dalfopristin
 → 国立医薬品食品衛生研究所資料 [PDF]

【参考データ】
プラテンシマイシン(platensimycin)
 …新規抗生物質候補
α-アボパルシン(α-avoparcin)
 …現在使用禁止の動物用(バンコマイシン類似構造)

※英語名クリックでChemFinder情報へ

《その他については抗生物質分子データ集(Chime版)をご参照ください》


本サイト内の関連コンテンツ(分子表示プラグインChimeが必要です)
ペニシリンGを含むPDBデータ(1FXV)の部分構造例
ペニシリンとD-アラニル-D-アラニン
カルバペネム系抗菌薬と多剤耐性菌
完全合成による新抗生物質/リネゾリド
炭そ(炭疽)菌
《今後も追加します》


図1 ペニシリン骨格(上左;下はその一例,ペニシリンG)とD-アラニル-D-アラニンの構造(上右;下はR'がHの場合)の重ね合わせ
※図上の緑色部分が類似部分(構造式は下記文献を若干変えて作成;-COOを-COOHとして表記
◎荻田 健,『講座:微生物と化学(3)/微生物に医薬を探る』,化学と教育,2000年11月号,p.740



図2 ペニシリンGを含むPDBデータ(1FXV)の部分構造から作成した画像例
Chimeデータ(約360kB)PDB部分データリスト


【参考】耐性菌出現の事例/バンコマイシンとアボパルシン

 耐性菌出現の原因の一つに,動物(家畜)用抗生物質の利用があります。有名なのが,動物用肥育促進剤のアボパルシンがバンコマイシンの構造に類似していたために(何れもグリコペプチド系),動物体内でできたVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)がヒトに広がったとされる事例で,そのため現在では日本はじめ多くの国でアボパルシンは使用禁止となっています。


【参考】有機概念図で見る抗生物質(上記抗生物質等についても今後計算して掲載します)


図3 X線造影剤,解熱鎮痛剤,抗生物質の有機概念図上での分布(画像クリックで拡大
◎データ引用:甲田善生,「有機概念図 ―基礎と応用―」,p.167,三共出版(1984)《絶版》
◎オリジナル文献:佐藤・甲田,日本薬学会第96年会予稿集,[4]232(1976) ほか
(著者と出版社のご了解を得て転載させていただきました。薬剤は出版時に用いられていたものですのでご了承ください)
※有機概念図について: 『Excel用有機概念図計算シート』の使用方法分子と分子の相互作用(QSARと有機概念図から)



(C) Copyright 2002-, Yoshio Honma, All rights reserved.
「生活環境化学の部屋」ホームページJmol版「分子の学習帳」Chime版「分子の学習帳」話題の抗がん剤

  1. 無料アクセス解析